情念一覧

江ノ島 稚児ヶ淵の由来

四周を断崖に囲まれた江ノ島。鎌倉建長寺の僧自休は容姿美麗な稚児白菊を見初める。高僧が堕ちた愛執地獄。悶え苦しんだ先に待っていた悲劇とは。歌舞伎「桜姫東文章」「青砥稿花紅彩画(弁天小僧)」などの原拠として知られる相州の伝説より。

神隠し 嬰児と黒髪

山中で遭遇した女は、かつて己が想った娘だった――。背中におぶった赤子の来歴。そして、女の来し方に秘められた悲話とは。二十年ぶりの再会に、男と女は何を思うのか。柳田國男「遠野物語」中の数篇より翻案。

歌い骸骨

友を騙して金を奪った七兵衛。何食わぬ顔で友を探す旅に出るが、待っていたのはカラカラと笑う髑髏だった。グリム童話やドイツの民話など、世界的にも類話の多い枯骨報仇譚。

後家殺し

伊勢屋の後家と良い仲になった、素人義太夫語りの常吉。ある時、訪れた友達にのろけ話を聞かせていたが、思わぬ真実を知らされて――。妻子を思う姿に、奉行が胸を打たれて放った一言とは。

手っ切りあねさま

継母に憎まれ、手首を斬り落とされた娘サト。あてどない旅の果てに出会ったのは、許嫁の男だった。ところが、二人の束の間の幸福に、継母がまたもや割って入り――。すれ違いと誤解が生む悲劇。

人知れず美しい婿

箱入り娘の前に現れた、天下に二人とないという旅の美男子。長者は娘の婿に是非と要請するが、美男子はいつまでも覆面を外さない。やがて、怨霊の登場とともに、美男子の素性が知れ――。

今戸五人切 お藤松五郎

互いに想い合いつつも、口に出せずにいた兄妹分の松五郎とお藤。ようやく結ばれた二人は、恋の手違いに巻き込まれ――。運命の悪戯が人を狂気に走らせる。負い目ある男ゆえの悲哀と悲運。

死に埋め婆の声がする

死してもなお、ともに寄り添い合おうと、死骸を壁に埋めてくれと頼んだ婆。爺も喜んで埋めてやり、毎晩、呼びかけられるのを楽しみにしていたが――。情愛の行き着く果ては、狂気かそれとも怨念か。