情念一覧

八百屋お七

火事に焼け出されて、檀那寺に避難したお七は、美童を見初め――。後に歌舞伎、文楽、落語など多くの芸能に扱われる、悲哀と狂気に満ちた少女の所業。井原西鶴「好色五人女」中の一遍より。

美姉妹と背徳の赤い糸

戦乱に巻き込まれ許嫁と死別した平次。彼のもとへ夜な夜な通ってくるのは亡き妻の妹。平次は愛欲の波に飲み込まれていくが――。江戸怪談の嚆矢、浅井了意「伽婢子」中の一遍より。

旅店の黒妖

横柄な地方の小役人を、冷めた眼差しで見る若者。その目にちらと映ったものは、得体の知れぬ黒い妖気だった。後に若者はその素性を知り――。唐代の伝奇小説「酉陽雑俎」中の一遍より。

犬と女房とその娘

二親に死なれて孤独になった長七は、寂しさを紛らわすために雌犬を飼う。その後、仲間のすすめで女房をもらうことになるが――。人と変わらぬ畜生の情念。

近江の女のいきすだま

東国へ下ろうと夜道を歩いていた男は、見知らぬ女にさる屋敷へ案内するよう乞われるが――。肉体を離れた情念の純化した恐ろしさ。「今昔物語集」中の一篇より。

丑の刻参り 宇佐八幡の鉄輪女

宇佐八幡宮近くの墓地に、妖魔が夜な夜な現れるという。噂を信じない武辺の者が、真偽を確かめに行くと――。妖怪変化よりも恐ろしいものとは何だったのか。「諸国百物語」中の一篇より。

砧(きぬた)

夫の上京のため、三年を孤独のうちに待ち続けた妻。里人の打つ砧の音に、抑えてきた情念が燃え上がる。やつれた妻と若い侍女。世阿弥作の謡曲より。

死骸に乗る男

捨てられ、怨みを抱いて死んだ妻。祟りを恐れて陰陽師を頼った夫は、冷たく突き放されて――。小泉八雲が世界に紹介した、恐怖の仏教説話より。

怪談牡丹燈籠

夢で契った女はすでにこの世を去っていた。カランコロンと駒下駄の音――。御存知、三大怪談の一。近代日本語の祖、三遊亭圓朝の大傑作より。