口なき子

こんな話がございます。 四谷のとある横丁に、升屋と申す染物屋。 店の主人は五十絡みで。 篤実な人物ではございましたが。 何の因果が祟った...

土蜘蛛

こんな話がございます。 頼光(らいこう)とその家来の話でございます。 その頃、都では藤原道長が権勢を誇っておりましたが。 こと、武勇におい...

飛騨の猿神

こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 当時、諸国を旅していた若い修行僧が、飛騨の国に迷い込みました。 迷い込んだと申しますの...

三娘子の驢馬

こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 当時、板橋店(はんきょうてん)という辺鄙な街に。 一軒の旅の宿がありまして。 彼の国では...

漆固めの妻

こんな話がございます。 ある村に若い夫婦がございました。 美しい妻に、優しい夫。 その上、代々続く名家だという、ケチのつけようのない幸せな...

ご挨拶

お初に――イヤ、お久しぶりに――お目にかかりましたナ。 砂村隠亡丸でございます。 お目にかかるだと。どこにいやがる。 声はするが、姿はど...