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継母と顔の赤い鳥

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こんな話がございます。

ある村に、五人暮らしの一家がありました。
両親と子どもたち三人で、仲良く暮らしておりましたが。
ある時、母親が病に臥せりまして。
看病虚しく、帰らぬ人となってしまった。

子どもたちはまだ幼いですから。
「かかさん」の死をどうしても受け入れることが出来ません。
上の娘、中の娘、下の倅と、三人で毎日を泣き暮らしておりました。

父親は、そんな子どもたちの姿を見ると、不憫でならない。
どうにかして、男手一つでしっかり育ててやらないといけない。
トハ、思いましたが。
それもこれも、死んだ女房に対する義理からでございます。

ところが、こう毎日、子どもたちが泣いているのを目にしますト。
女房に対する自分の義理より、大事なものがあるのではないか。
子どもたちを癒やしてやることのほうが、よほど大事なのではあるまいか。
そう思うようになりまして。

そこで子どもたちを呼び集めて、相談をいたしました。

「ととさんは、新しいかかさんをもらおうと思う。お前たちはどうだ」

上の娘は今年で十二でございます。
それなりに分別もある年頃ですから。
亡き母のことも思い、すぐには答えずに黙って考えている。

中の娘は八つでございます。
初めこそ、姉の顔色をうかがってはおりましたが。
「新しいかかさん」という言葉に、やはり好奇心を示しまして。

「――新しいかかさんは、やさしい人か」

ト、父に訊いた。

「やさしい人でなければ、もらわん」

父も優しく答えました。

下の倅はまだ五つでございます。
これはもう、初めから興味津々で。
姉二人の反応など気にもせず、食いつくように身を乗り出しまして。

「新しいかかさんがほしいッ。やさしい人ならすぐにほしいッ」

ト、素直に父にせがみました。

それを聞いて、中の娘が「私もほしい」ト、目を輝かせる。
二人の言葉を聞いて、上の娘がようやく「私も――」ト、ぽつりと言いました。

子どもたちの言葉を聞いて、父も心を決めまして。
つてを頼って、他所の村から良い嫁を探してもらいました。

こうして、父親は子どもたちのために二度目の女房を娶りました。
死んだ女房の墓前に、新しい女房を連れて行き、家族五人でお参りする。

大体、継母というものは、継子に厳しいものト相場は決まっておりますが。
この母親はそうではない。
まだ若いですので、子どもたちが年の離れた妹、弟のように見える。
先妻の霊前にも「どうぞよろしく」ト、殊勝に手を合わせて祈りました。

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下の倅は、新しいかかさんにすぐに懐きました。
中の娘も、それを見て安心して懐きました。
上の娘は、遠慮があるのかなかなか懐かない。
新しい母親も、気持ちは分かりますので、努力してみずから歩み寄った。

「あなたはやさしい子なのね。亡くなったお母さんが一人になって可哀想だと思っているのでしょう。私のことはお姉さんと思っていていいのよ」

それを聞いて、上の娘もやはりそこは子どもですから。
本当にやさしい人なんだと思い、やっと心を許して懐きました。

継母も継母で、子どもたちに辛い思いをさせまいト。
よく働き、また、子どもたちとも仲良く遊びました。

ふたたび、五人の楽しい暮らしが戻りまして。
ようやく父親も安心する。

継母が努力して、子どもたちの心を開かせたこともあり。
今では三人とも、すっかり新しいかかさんに懐いている。
最も警戒していた上の娘も、本当の母親と思って甘えています。

それでも、上の娘は分別のある年頃ですから。
自分たちが甘えているばかりでは、新しいかかさんに悪いト思い。
ある日、二人になった時に、それとなく継母の前で呟きました。

「私、新しい弟か妹がほしい」

継母は意外に思ったのか、驚いた様子で。

「本当にそう思うのかい」

ト、何度も訊き返しました。

継母はよほど嬉しかったのか、上の娘を抱き寄せる。
上の娘も嬉しくなって、妹や弟にこの話をする。

それからは、中の娘も、下の倅も、一緒になってせがみます。

「新しい弟がほしい。新しい妹がほしい」

父親もそれを耳にして、微笑ましく見守っている。
しばらくの間、親子五人の間では赤ちゃんの話で持ちきりでございます。

ところが、それからひと月経ち、ふた月経ち、半年が経ち、一年が経ち――。
いつまで経っても、新しい弟、妹が生まれる気配はございません。

そのうちに、上の娘がこのことを話題にしなくなる。
中の娘が、とりあえず姉の態度に従うようになる。
下の倅は無邪気にせがみ続けましたが、その度に姉二人に咎められる。

やがて、誰もこのことを口に出さなくなる。
それにつれて、継母も次第に元気をなくしていきました。

上の娘はもちろん、中の娘も、下の倅までも、母親を心配しておりますうちに。
家内の様子が徐々におかしくなっていきました。

――チョット、一息つきまして。

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