猿の恩知らず

死にゆく定めにあったところを、人間の女に救われた猿。頭を何度も下げながら山へ帰っていくかに思われたが――。獣なりの考えとは何だったのか。誰もが驚かされる結末とは。今昔物語集より。

食い込む爪

旅の途中、街道沿いのある村で宿を求めた四人の若者。老いた主人が貸し渋る一室に、何とか口説き落として泊めてもらうことになったは良いものの――。暗闇の惨劇。息を呑む展開。聊斎志異中最恐との呼び声高い一話より。

修羅道 佐倉惣五郎

下総佐倉の名主、木内惣五郎。領主堀田正信の苛斂誅求に、民になり代わって立ち上がるが。義憤の行く先に待っていた悲劇。歌舞伎「東山桜荘子」の原拠として知られる実在の人物伝より。

神隠し 嬰児と黒髪

山中で遭遇した女は、かつて己が想った娘だった――。背中におぶった赤子の来歴。そして、女の来し方に秘められた悲話とは。二十年ぶりの再会に、男と女は何を思うのか。柳田國男「遠野物語」中の数篇より翻案。

生き人形のととさま

旅の修行僧が民家で土産に持たされたのは、手のひらほどの大きさの生きた人形だった――。不気味さと愛らしさのはざまに、人の業と悲哀が垣間見える。「新説百物語」中の一遍より。

橋の上の女童鬼

渡った者は生きては帰られないという、近江国の安義橋。見栄を張ったがために、肝試しに行かされた男が出会ったのは、一人のいとけない女童だったが――。今昔物語集中の一遍より。

美女狩り、妖怪斬り

正義を奉ずるあまりに暴虐に走る地方官吏の男。罪人にはみずから拷問をし、女には辱めを与える。ある時、妖怪が出るという宿に泊まることになり、退治してやると意気込むが――。清代の伝奇小説「子不語」中の一遍より。

黄金餅(こがねもち)

貧乏長屋に住むケチで有名な乞食坊主。ある時、病の見舞いに来た隣人に、薬よりあんころ餅を食べたいと言い出す。怪訝に思って、隣人が壁の穴から覗いてみると――。三遊亭圓朝作、古今亭志ん生の十八番として知られる、古典落語の傑作より。

歌い骸骨

友を騙して金を奪った七兵衛。何食わぬ顔で友を探す旅に出るが、待っていたのはカラカラと笑う髑髏だった。グリム童話やドイツの民話など、世界的にも類話の多い枯骨報仇譚。

虚舟(うつろぶね)

遠い海の向こうに行ってしまった亡き母の幻影。あるうららかな春の日に沖から流れてきたものは、異国の若い女をのせた舟だった。未だ解明されていない江戸の実録ミステリー。