子殺し幻術

ある日、漢人の街に現れた西域人の父子。父は息子の首を斬り落とすが、それは鮮やかな幻術だった。ところが、それが思いもよらぬ事態を招き――。青い瞳と赤い鮮血。最後に倒れたのは誰だったか。南唐「中朝故事」中の一篇より。

蛇女房

寂しく暮らす木こりの与市のもとへ、ある日訪ねてきた美しい娘。見知らぬ女と挙げる祝言。産屋から漏れ聞こえる呻き声の謎。「坊、坊」と鐘の音。雪のように白い肌と、卵のような女の目玉。切なくも美しい異類婚姻譚。

暗峠 姥ヶ火の首

山家の花と謡われた美貌の娘を襲った哀しい偶然。人目を忍んで老いた女は貧しさの中で罪を犯したが――。二股の矢が生首を刎ねる。火を吹き、宙を飛ぶ妖異。井原西鶴「西鶴諸国ばなし」中の一篇より。

怪談乳房榎(一)落合の蛍狩り

絵師菱川重信の下男正介は、悪人磯貝浪江に脅されて主人を落合へ蛍狩りに誘い出し――。幽霊の遺した落款。墨絵の雌龍雄龍がやぶにらみする。近代日本語の祖、三遊亭圓朝による四大怪談噺の一。

吹雪の夜 一つ褥の妖かし話

清代北京の路地裏。一つ屋根の下に暮らす兄嫁と義弟。互いに長年秘めてきた恋心が吹雪の晩に形をなす――。貂の帽子に狐の皮衣。美少年のたわわな黒髪が、二人の思いを一つに結ぶ。

丸山遊郭 猫の食いさし

長崎の丸山遊郭。今日から初めて客を取るという、幼い遊女の左馬の介が見初めた若衆。暗闇に光る青い光。ねちゃり、ねちゃりと舐め回す舌。雨そぼ降る中に現れた美少年の正体とは。

五色の鹿

山奥深く孤独に暮らす猟師。激流に呑まれた男を命がけで救ったのは――。報恩と虚栄心が入り乱れる。釈迦の前世譚「ジャータカ」を原話とする「宇治拾遺物語」中の一篇より。