蘭陵王の婿

天涯孤独の若い男のもとに願ってもない縁談が舞い込む。聞けば相手も独り身で、その上尽き果てぬほどの財を持っているという。ところが、その背後には男を待ち受ける恐怖の奇面の影があった。

土偶の博徒

百越の故地、肇慶。番卒が城中を夜回りしていると、燈火に群がる男たちの歓声が――。リリリリリとコオロギの声。ごろりと床に転がる首。乱れ交う大金の意外な出処とは。「夷堅志」中の一篇より。

傾城阿波の鳴門 巡礼歌

主家の宝刀を探し求めて、大坂に潜伏する十郎兵衛夫妻。ある日、隠れ家にやって来た幼い女巡礼は、国に置いてきた我が娘の成長した姿だった――。近松半二作の名作人形浄瑠璃より。

こんな晩

実直者として評判だった船頭嘉吉。夜遅くに一人乗った座頭の懐に、妙な手触りを感じたのが運の尽きだった。夏目漱石「夢十夜」、落語「もう半分」などの原拠として知られる恐怖民話。

廃寺の五妖怪

荒れ果てたかつての名刹には、謎に満ちた噂が――。仏法をもって魔と対峙する旅僧。謎を解く鍵は物の怪たちが互いを呼び合う名前にあった。民話としても全国に流布する江戸の傑作降魔譚の一。

阿弥陀の聖

ひと気のない森の中、見知らぬ男に握り飯を勧められた念仏聖。不意に男は立ち上がり、驚くべき事実を口にする。因縁の狩衣。山の麓の荒屋と老夫婦。迫りくる蓮の花に秘められた情念とは――。

水を飲んだ女

真夏の昼下がりに現れた幼く愛らしい寡婦。その人柄に惹き込まれた王夫婦は、少女を息子の嫁にもらうことにするが――。夢枕に悲痛の訴え。寝間から聞こえる怪しい音。「酉陽雑俎」中の一遍より。

死神

金の算段がつかず、女房にも愛想を尽かされた男。目の前に現れたのは、ひとりの老人だった――。近代日本語の祖、三遊亭圓朝が、移入されたばかりの西洋文物を翻案して創出した日本の死神。

江ノ島 稚児ヶ淵の由来

四周を断崖に囲まれた江ノ島。鎌倉建長寺の僧自休は容姿美麗な稚児白菊を見初める。高僧が堕ちた愛執地獄。悶え苦しんだ先に待っていた悲劇とは。歌舞伎「桜姫東文章」「青砥稿花紅彩画(弁天小僧)」などの原拠として知られる相州の伝説より。

生きながら鬼になりし者

二親に死なれ、天涯孤独の小太郎は、親孝行と評判の巳之助を常に妬んでいた。山中であるものを手に入れた彼は、巳之助を酷い目に合わせようと画策するが――。諸国百物語中の一篇より。